御法 その九

 引き続いてこの法会を機会に不断経や法華懺法の読経などいろいろありがたい祈祷を怠りなくさせた。こうした祈祷はさほどの効験も現れないまま月日が経っていくので、それを行うことが日常行事になってしまい、しかるべき方々の寺々で引き続いてさせるのだった。


 夏になると紫の上は例年の暑さにさえももちこたえられず、気を失うようなことも今までよりいっそう多かった。どこといって特に悪いという容態でもなく、ただもめっきり衰弱した様子で見るに見かねるというほどの苦しみはない。


 そばの女房たちもいったいどうなるのかとはらはらするにつけてもまず目の前が真っ暗になるようで、先立たれることがもったいなく悲しくてならない。


 こんな容態が続いていたので、明石の中宮も二条の院に退出していた。東の対に滞在するので、紫の上もそちらで待っている。中宮行啓の儀式などはいつもの通りだが、紫の上は明石の中宮のますますの栄えも若君たちの華やかな前途も見届けずにこの世を去るのかなどとばかり思っているので、何かにつけてもの悲しくてならないのだった。

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