御法

御法 その一

 紫の上はあの大病のあとはめっきり弱くなって、どこが悪いというのでもなくずっと病気がちの日がつづいていた。


 ひどく重体というのではないが、もうだいぶ病気の年月も重なっているので、いよいよか弱くなるばかりで、回復の兆しが一向に見えない。


 光源氏はそれを限りなく心配して、この上なく悲しんでいる。たとえわずかの間でも紫の上より後に生き残ることはどんなにひどく悲しいことだろうと思っている。


 紫の上自身としてはこの世に何の不足もなく気がかりになる子どもさえいない身の上なので、これ以上無理に生き永らえたいとも思っていない。ただ長い年月濃密に愛し合ってきた光源氏とのご縁がふっつりと絶えてしまえば光源氏がどんなに嘆くことかとそればかり人知れず胸の内にしみじみと悲しく思うのだった。

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