夕霧 その一一一
姫君はまだとても小さく可愛らしいのをつくづく可哀そうに思い、
「母君のおっしゃる通りになさってはいけませんよ。あんなふうに強情っぱりでものわかりの悪いのはとてもいけないことなのですよ」
と言い聞かせている。
舅の大臣はこうした経緯を聞き、世間の物笑いになると嘆いた。
「どうしてしばらくはそのまま様子を見ていなかったのです。夕霧にだってこうなれば何かと考えがあるだろうに。女がこんなふうに請求に思い切ってしまうのもかえって軽はずみに見えるものだ。しかしまあ、いいだろう。いったんこうして言い出した以上はどうして今更馬鹿面下げておめおめ帰ることがあろう。いずれ自然にあちらの様子や考えもわかってくるだろうから」
と言って、一条の女二の宮に、子息の蔵人の少将を遣わした。
契りあれや君を心にとどめおきて
あはれと思ふうらめしと聞く
「やはり私どもをお見捨てにはなれないでしょう」
と書かれた手紙を持って蔵人の少将はさっさと邸に入るのだった。
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