夕霧 その一一〇

 夜が明けてから、



「人の手前も大人気ないことですから、もうこれまでとあなたがきっぱりおっしゃるならひとつ別れてやってみましょう。あちらに残っている子供たちもいじらしくあなたを恋しがっていましたが、あの子たちをあなたがわざわざ選びの残して捨てて行かれたのにはそれだけの理由があるのでしょう。捨ててもおけませんからとにかくどうなろうと私が育てることにしましょう」



 と脅しながら言うと、雲居の雁はいたってまっすぐな気性なのでここに連れてきた子供たちまであの一条の宮邸に連れて行ってしまうのではないかと不安になる。夕霧は姫君に向かって、



「さあこちらにいらっしゃい。こうして私が会いに来るのもみっともないから、そんなに来られないでしょう。あちらにも可愛い子供たちがいるから、せめて同じところで世話してあげよう」



 と言うのだった。

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