夕霧 その一〇〇

 夕霧は、



「あの方を思う私の心は人と違っていて、どんなにお慕いしていても無理強いはしないから、服喪に何の心配もないのに思うようにいかない仲ですね」



 と吐息をついて、



「いつもの部屋にいらっしゃるなら几帳越しにでも私の思うことだけでも申しあげて、それ以上服喪専心のお心を傷つけるようなことはいたしません。どんなに長い年月でもお待ちするつもりです」



 など、尽きもせず掻き口説くが、



「やはりこうした喪中で悲しみに取り乱しておりますところへ、あなたがご無理をおっしゃいますのがいっそう辛くてなりません。世間の人がどう思うかと、一通りでなくつらい思いをしてきましたが、それはそれとしてことさらひどいあなたのお心は情けなくてなりません」



 と女二の宮はまた言い返して恨み、まるで寄せ付けようともしない態度を固辞しているのだった。

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