夕霧 その九十九
一条の宮ではまだ女二の宮が塗籠に閉じこもっているので、女房たちは、
「いつまでもこうしていらっしゃるわけにはまいりません。大人気なく困った人だと世間でも評判が立てられるでしょうからいつものようになさいましてきちんとお考えを夕霧様に申し上げたらようございましょう」
などいろいろと言うので、女二の宮はもっともなことだとは思うものの、これから先の世間の取り沙汰も今までどんな気持ちで過ごしてきたか、それも皆あの憎たらしい恨めしい人のせいだと思いつめ、その夜も会わなかった。夕霧は、
「迂闊に冗談も言えないくらい、あなたの仕打ちは珍しくて尋常ではありません」
と恨みのありたけを言う。女房たちも気の毒なと思っている。小少将の君が、
「『少しでも人心地がつくようになりますまで、私をお忘れでなければ、その折に何かとお返事いたしましょう。せめてこの服喪の間は、一筋に心を乱すことなく母の供養を勤めていたいのです』と、堅いご決心をなさってのお言葉でございますが、あいにくこんな噂が立ってしまって、知らない人もなくなってしまったようなのを、やはりとても情けないことに思っていらっしゃいます」
と言うのだった。
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