夕霧 その九十六
夕霧は、
「それ、そんなにいつも子供っぽく腹を立ててばかりいらっしゃる成果、もう見慣れてしまってこの鬼さんは今ではもうちっとも恐れなくなってしまった。鬼ならもっと神々しいう威厳が欲しいものだね」
と冗談にしてしまうが、雲居の雁は、
「何を言っているの。あなたなんかさっさと死んでおしまいなさい、私も死にます。顔を見れば憎らしいし、声を聴くと癪に障るし、見捨てて死ぬのは気がかりだし」
と言うと、いっそう可愛らしさが増すばかりなので、夕霧はやさしく笑って、
「離れてしまって会わないでいてもよそながら噂をお耳にされないわけにはいかないでしょう。私に死ねと言われたのは死んでからも私たちの夫婦の契りの深さを知らせようとのおつもりなのですね。夫婦の一人が死ねばすぐもう一人が後を追おうと、確かそんなお約束をしましたっけ」
と軽くあしらってあれこれと雲居の雁はもともととても無邪気で素直な心の可愛らしい人なので、どうせまた一時の気休めを言っているのだと思いながらも自然に機嫌を直して和やかになっているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます