夕霧 その九十二
花散里は、
「世間のでたらめの噂かとばかり思っていましたのに、本当にそんなご事情でいらっしゃったのですね。そんなことは世間にはよくある話ですが、雲居の雁の姫君がどんなお気持ちでいらっしゃることかととてもお可哀そうですわ。今まで何のご苦労もなさらなかったのに」
と言う。
「姫君などと随分可愛らしそうにおっしゃいますね。まったく鬼みたいな性悪女なのに」
と言って、夕霧は、
「それでも私はあれだって決していい加減には扱ってはいませんよ。失礼ではございますが、この六条の院の女君たちのお暮らしぶりからもお察しください。女というものは結局穏やかでおとなしくしているのが勝ちです。口やかましくことを荒立てがちに嫉妬されますとはじめのうちはなんとなく面倒でうるさいのでつい遠慮することもあるのですが、いつまでもいいなりに従うわけにもいきませんから、一騒動起こったが最後、お互いに嫌気がさして愛想も尽きてしまいます。やはり紫の上のお心遣いこそは何位につけてもまたとなく珍しく御立派ですし、またこちら様のご性質などこそつくづく素晴らしいと感心しきってしまいました」
などと褒めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます