夕霧 その九十一
「当の女二の宮本人はどうしても俗世の生活はなさりたくないと強くご決心をなさり、尼になろうと思いつめて悩んでいらっしゃるようですから、なかなかどうしてそんな噂のようなことがありましょう。あちらこちらで聞き苦しい噂も立てられるでしょうが、そういうふうに出家なさって私の嫌疑が晴れるとしましても、やはり私はあのご遺言に背かないようにと存じまして、ただこうしていろいろお世話しているのです。光源氏様がこちらにいらっしゃいました折にでも何かのついでがおありでしたら今申し上げたようにお伝えください。今まで真面目に過ごしてきてこの年になってあげくの果てにつまらぬ料簡を起こしたように光源氏様がお思いになられはしないかと気兼ねをしながらもまったくこの道ばかりは人の忠告も耳に入らずまた自分の心なのに思うようにならぬものなのですね」
と声をひそめてしんみりと言うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます