夕霧 その八十七

 小少将の君は、



「本当に女二の宮へのお気持ちが深く、末永くと思うなら、今日明日のところはこのままお過ごしになってから女二の宮へお会いくださいまし。こちらへお帰りになりましてからは帰ってまた悲しみが深くなり、物思いに沈みこまれて死んだ人のようになって寝込んでいらっしゃいます。私たちがご機嫌を取ってお慰め申し上げるのさえひどくうるさがってつらそうにしていらっしゃいます。何といっても自分の身がまず大切です。これ以上私も女二の宮の御不興を蒙りたくありませんので、女二の宮のお気持ちにさからうようなことは申し上げにくいのでございます」



 と言う。夕霧は、



「何ということだ。想像申し上げていたのとはまったく違って、合点のいかない大人げないお考えの人なのですね」



 と言い、自分の考えていることは女二の宮にとっても自分にとっても世間の非難など受けるはずもないということを言い募るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る