夕霧 その八十六

 三条の本邸では女房たちが、



「突然に何というひどいなさり方ですこと。いつの間にこんなことになっていたのでしょう」



 と驚いていた。ものやわらかで風流がかったことに興味を持っていない人はこうした思いもかけない突然なふるまいを時にはするものなのだ。けれども世間ではもう何年も前からの関係をまったく秘密に隠してきたのばかり思い込んでこんなふうに女君のほうではまだ不承諾でいると気づく人は一人もいない。どちらにしても女二の宮のためには気の毒なことだった。


 喪中のことなので婚礼の支度なども華やかさをさけ、いつもとは様子が変わっていて新婚のはじめとしては憚られ、いかにも縁起が悪いようだが、とにかく食事なども終わって皆寝静まったころに夕霧は来て、小少将の君に今夜女二の宮と会うことができるように取り計らえと急き立てるのだった。

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