夕霧 その六十三
雲居の雁はやはりこの二人の間柄を気にして、
「どういうことになっているのだろう。御息所とは確かにお手紙のやり取りも親密にしていらっしゃったようだけれど」
などと、納得のいかないままだった。夕霧が夕暮の空をしみじみ眺め入って横になっているところに、若君を使いにして手紙を届ける。その小さな紙の端に、
あはれをもいかに知りてかなぐさめむ
あるや恋しき亡きや悲しき
「それがわからないのがつらくて」
とある。夕霧は苦笑して、
「あれこれよくこんなふうに気を回してうるさく言うものだ。御息所の死を悲しんでとはとんだ見当違いしてみせるものよ」
と思ってすぐ何気ないように、
いづれとかわきてながめむ消えかへる
露も草葉のうえと見ぬ世を
「この世のすべてが悲しくて」
と書くのだった。
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