夕霧 その六十一

 夕霧からは毎日見舞いがある。心細そうにしている念仏の僧などの気分がまぎれるようにと何かと慰問の品が届けられたり、女二の宮のもとには手紙にしみじみと情熱をこめた言葉を尽くしてその冷たい態度を恨むとともにまた一方では女二の宮の悲しみを限りなく慰め、お悔やみを言うが、女二の宮はそれを手に取ろうとせず、一切見ることはない。


 あの根拠のないあさましい一件を母君が重態ですっかり弱った心に疑いもなく真実と信じ込んだまま、亡きなってしまったことを思い出すと、そのことが成仏の障りになるのではないかと胸もつまるように思う。この人のことをちらとでも耳にするだけでさえ、ひどく恨めしく辛がって涙を催す。


 女房たちも夕霧に何ととりなしていいやら途方にくれている。


 女二の宮から一行の返事さえもらえないのを、夕霧ははじめのうちは悲嘆のあまりのことと思うのだが、それがあまりに長く続くので、どんな悲しみにも限度はあるはずなのに、どうしてこうも人の気持ちをまったくわかってくれないのか、まるで聞き分けもない子供のような人だと恨めしくてならないのだった。

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