夕霧 その五十三
女二の宮は母の死に遅れまいと思いつめて亡きがらにひしとすがりついて添い伏している。女房達がそばに来て、
「もう今はどうにもいたしかたがございません。そんなにひどくお悲しみあそばしても定められた死出の旅路からはお戻りになられるわけもございません。お後を追おうとなさったところでどうしてお望み通りになられましょう」
と今更わかりきった道理を言って、
「そんなにお嘆きになるのはとても不吉なことでございます。また涙は亡き人の御成仏の障りにもなりましょう。さあもうあちらへまいりましょう」
と引き起こして連れて行こうとするが、女二の宮は体がすくんだようになって、正気も失った状態でいる。修法の壇を取り片づけて、加持僧たちもばらばらと帰っていく後に、葬儀や忌み籠りのお勤めの役僧だけがわずかに残っていた。それでももう万事は終わったというありさまはこの上もなく悲しく心細い限りなのだった。
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