夕霧 その四十九

「今更いろいろうるさいことは申し上げたくはありませんけれど、やはり宿世とは言いながら思いのほかにお考えがたわいなくて人にそしられるようなことをなさってもう取り返しのつくことではありませんが、これからはやはりよくお気をつけなさいまし。つまらない身の上ながら、すべてできるだけのことをしてあなたを大切にお育て申してきましたが、今では何もかもよくご分別になり、男女の仲であれこれの事情の十分にご判断できるようにお躾けしたと思って、そちらの方面のことは安心しきっておりましたのに、やはりまだとても幼い面がおありで、しっかりした分別もお出来にならなかったのだと、いろいろ心配でもうしばらくは生きていたくなりました。普通の女でも多少とも上流の家に育てば貞女二夫にまみえずで二人の夫を持つためしは好ましくなく、軽率なことだと非難されます。まして皇女という高貴なご身分ではそんなにありふれた仲のように男の人が近づくことは許せません」

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