夕霧 その三十三
「この女房たちも本当はどう思っているだろう。まだ母上もご存知ではなく、あとから少しでもお聞きになることがあった場合、あの時よくも空とぼけて隠していたなどと思い合わせになられるようなことになれば、それもどんなに気が引けて恥ずかしいだろう」
と思い、また横になってしまった。
「気分がとても悪いのです。このまま治らなくなったら、いっそ何もかも都合がいいのに。脚気が頭に上ったような気がする」
と言い、小少将に按摩などさせる。あれこれと何かにつけて苦しいほど思いつめているので、のぼせてしまった。小少将の君は、
「御息所に昨夜のことをそれとなくお告げした人がいたようでございます。それで一体どういうことだったのかとお訊ねになりましたので、ありのままに申し上げましたが、襖は固く錠をかけてあったとそればかりは多少言葉をそれてきっぱりと申し上げておきました。もしそのようなお話がそれとなくございましたら、私と同じようにおっしゃってくださいますように」
と言う。御息所が心痛のあまりひどく嘆いた様子は話さない。
「ああ、やはりそうだったのか」
と、女二の宮はとてもつらくものも言えないでいるその枕から、涙が滴り落ちるのだった。
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