夕霧 その二十四

 小野の山荘には手紙を出したが、女二の宮は見もしない。突然あんな呆れた目に遭わされたことが口惜しくも恥ずかしくて夕霧が腹立たしくてならない。御息所がこのことを耳にするだろうと思うとたまらなく恥ずかしいし、またこんなことがあろうとは夢にも思わないのに、なんとなくいつもと違った自分の素振りに気付いて、人の噂はたちまち広がる世間だから自然御息所の耳にも入り、いろいろと聞き合わせて自分が隠し立てをしていたと考えたらとてもつらいので、



「いっそ女房たちがありのままをそっとお耳に入れてくれないものか。御息所がそれを聞かれて、情けないことだとお嘆きになっても仕方がない」



 と思う。


 二人は親子の間柄の中でも格別にしっくり気が合っていて少しの隠し事もなくお互いにむつみ合っている。他人には知られている秘密も親には隠すという例は昔物語にもよくあるようだが、女二の宮はまったく考えないのだった。

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