夕霧 その十二
「どっちつかずで困ってしまいます。帰る道は霧で見えなくなり、この霧の垣根の内からは立ち止まることもできないように追い立てようとなさいます。こうしたことは不慣れな私はまったく途方に暮れてしまいます」
などと言い、そのまま立ち去りかねてためらっているうちにもう抑えきれなくなった胸の思いをそれとなくほのめかす。
女二の宮はこれまでも夕霧のそうした気持ちをまったく気づかなかったわけではない。それでもいつも気づかないふりばかり装っていたのに、夕霧がこんなふうに言葉に出してあからさまに恨み言を言うのを、厄介なことになったと思い、ますます返事もしない。
夕霧はひどく悲しみながら心の内ではこんな絶好の機会が二度とあるだろうかと思案を巡らせている。
「たとえ思いやりのない線りょな男と軽蔑されても仕方がない。せめて長い年月、女二の宮に恋い焦がれ続けてきた、心の片端だけでもお打ち明けしよう」
と思って、お供の人を呼ぶと、近衛府の将監から五位に叙せられた者で、腹心の家来が来たのだった。
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