夕霧 その二

 夕霧は何とかしてよい折を見つけて思いのたけを存分に言い、女二の宮の反応もうかがいたいものと思い続けていた。


 そのうち御息所が物の怪のためにひどく患い、叡山の麓の小野のあたりに持っていた自分の山荘に移った。それは以前からなじみの祈祷僧で、物の怪などを調伏してもらっている律師が叡山に籠り中で、人里には出ないという誓願をたてているのを麓近い山荘まで何とか下山してもらおうというつもりからなのだった。


 山荘行きの車をはじめ、前駆のお供などは夕霧から寄越す。昔からの亡き柏木と縁の深い兄弟たちはかえって自分たちのそれぞれの日々の暮らしの忙しさにまぎれて、こちらを思い出してあげるゆとりもない。すぐ下の弟の弁の君だけは、やはり女二の宮に下心がなくもなかったのでそれとなく気持ちを匂わせたところ、とんでもないという冷たいあしらいだったから、それ以来強いて訪ねることもできにくくなるのだった。

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