鈴虫 その十二

 今夜は十五夜の月見の宴が催されるのではないかと察して、蛍兵部卿の宮が六条の院に来た。そこへ夕霧が殿上人のしかるべき人々を連れて来て、光源氏は女三の宮のところにいるようだと琴の音に導かれてすぐにこちらに来た。



「あまり所在がないものですから、ことさらの月見の宴と言うのでもなく、長い間耳にしなかった久しぶりの琴の音などが聞きたくなって、一人で弾いていた音をよくまあ聞きつけて訪ねてくださった」



 と言い、こちらに席を用意して兵部卿の宮も招き入れる。


 宮中でも今夜は月見の宴があるはずだったのに、中止になって物足りなかったのでこの六条の院に人々がいると聞き伝えて、誰彼となく上達部たちも集まってきた。みんなで虫の音の品評を行うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る