鈴虫 その三
お堂の飾り付けがすっかり終わり、講師が参上して行道する人々も皆揃ったので、光源氏も法会の席に出ようとして今日は女三の宮の居間にあてている西廂を覗くと、手狭な感じのする仮の御座所が隙間もないくらいいっぱいに暑苦しそうなほど仰々しく正装した女房たちが五、六十人ばかり集まっていた。
西廂ばかりではなく北廂も簀子まで入りきれない女童たちがあふれてうろうろしている。火取り香炉をたくさん出して煙たいほど扇ぎたてるので、側に寄っていき、
「室内に香らす薫香はどこで薫いているのかわからないほどほのかなのがいいのです。富士山よりもひどく煙が立ち込めているのは見苦しいことですよ。お説法を伺うときは、周りで物音を立てないようにしてゆっくりと静かにお話の内容もよく聞き取らなければならないのだから、はしたない衣擦れの音や人の動作は特に物静かに気をつけないといけませんよ」
など、いつもながら嗜みのない若い女房たちの心構えを教えるのだった。
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