柏木 その五十八

「なまめかしくあでやかなお姿といったら、またなんてたおやかでいらっしゃるのでしょうか」



 と、女房たちは互いにそっとつつき合っている。今、相手をしている少将の君という女房に取り次がせて、女二の宮が、




 柏木に葉守の神はまさずとも

 人ならずべき宿の梢か




「突然の出来心でおっしゃりようにお心の浅はかな人のように思われてまいりました」



 と言う。夕霧はもっともと思い、少し苦笑した。


 御息所がにじり出てくる気配がするので、夕霧はそっと居住まいを直した。



「憂いの多いこの世の中を嘆きながらふさぎこんでいる月日が重なったせいでしょうか、この節気分がすぐれず、どうしたことかぼんやりして正気がないような有様で過ごしております。こうして幾度も重ねてお見舞いくださいますことがまことにありがたく思われますので、気を引き立ててお目にかかることにいたしました」



 と言い、確かに苦しそうな様子だった。

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