柏木 その三十五
三月になると、空の景色も何となくうららかでこの若君も五十日のお祝いをするほどになった。若君はとても色が白くて可愛らしく、日数にしては育ちもよくて口など早くもきくようになった。
光源氏が来て、
「気分は爽やかにおなりですか。しかしまあ実に張り合いのないことですね。これがもとのお姿のままで元気におなりになったのを拝見するのでしたらどんなにうれしくお会いできたでしょう。辛くも情けなくもこの私を捨てて出家しておしまいになったとは」
と涙ぐんで恨み言を言う。
麻日に必ず来て尼になった今のほうがかえってこの上もなく大切に丁重にお世話している。
五十日の祝いには餅を若君にさし上げるのだが、女房たちは祝いの席に母君が尼姿でいるのはどうしたらいいだろうかと躊躇していると、そこに光源氏が来て、
「何の差支えもない。女の子であれば同じ女性ということで、もし母君と同じようになられたら縁起の悪いという心配もあろうが」
と言って南表の正殿に若君の小さな御座所なども設けて餅をあげるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます