柏木 その三十六

 乳母がとても華やかに着飾って着物、様々な工夫を凝らした籠物や檜破籠などに盛られた品々を御簾の内にも外にもいっぱい散らしている。誰もこの若君の誕生の秘密については何も知らないので、無心に遠慮なく振舞っているのを見ると、光源氏はとても辛くて見るに見かねて目を背けたい気持ちになる。


 女三の宮も起きていたが、尼削ぎにした髪の裾がいっぱいに広がっているのをひどく決まり悪そうにして顔を背けている。女三の宮はますます小さく痩せて髪は削ぎ髪の役をした僧がいたわしさに惜しんでわざと長く削いだので、後ろ姿は普通の人と変わらないように見える長さだった。段々に重くなって見える鈍色の着物に黄のまさった紅の上着などを着て、まだ尼姿がしっくり身につかない横顔はかえって可愛らしい童女のように爽やかでしっとりとした美しい感じだった。

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