柏木 その十九

 光源氏はいとわしく腹立たしく思っていた例の件も忘れてこれは一体どうしたことになるのかと悲しく残念にも不本意にも思い、とても感情を抑えることができず、几帳のうちに入って、



「どうしてこの先刺して長い命でもない私を振り捨ててこんなお気持ちになられたのですか。どうかやはり今しばらくお心を追静めになって薬湯を召し上がり、和尚くじなどもお取りくださいませ。出家にどんな尊い功徳があっても、お身体が弱っていてはお勤めもできるでしょうか。とにかく養生なさってからのことです」



 と言うが、女三の宮は頭を振り、



「今更何と堪えがたいことをおっしゃるやら」



 と思っている。


 表面はさりげなくしていても、心のうちでは自分の薄情さを恨んでいたのかと察すると、光源氏はいじらしくかわいそうな気持ちになるのだった。

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