柏木 その十四
山の朱雀院は女三の宮のお産が無事終わったと聞いてしみじみ愛しく、懐かしく早く会いたいと思ったが、引き続いてずっと病気だということばかりが伝えられるので、どうなることだろうかとお勤めも怠りがちに心配ばかりしている。
あれほど衰弱していた女三の宮が何も食べないまま何日も過ぎているので、まったく回復の望みもないように頼りなくなってしまい、
「これまで長らくお目にかからなかった間よりも五十の賀のお席で久々にお会いして以来のほうがずっと朱雀院が恋しくてならないのは、もう二度とお目にかかれなくなってしまうからなのでしょうか」
と言って泣く。
女三の宮がこんなふうに光源氏に言ったことを、光源氏から人を介して朱雀院に伝えると、朱雀院は本当に耐えがたいほど悲しく思い、出家の身としてはあるまじきことと思いながら、夜陰に紛れて山を下りた。前もってそういう報せもなくいきなり朱雀院がこのように来たので、光源氏は驚いて恐縮して挨拶するのだった。
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