若菜 その二九六
「いかにも子供っぽい頼りないあなたの御気性をよく承知だからこそこんなにひどく心配あそばしていらっしゃるのだと私にはその気持ちがよく理解できます。これから後は本当に万事にお気をつけにならないといけません。こんなことまではなるべく申し上げないのですが、朱雀院が私の悪い噂をお耳にされ、お心に背いてけしからぬとお思いになっていらっしゃるのが、気づまりでもあり心苦しいのでせめてあなただけでも聞いていただきたいのです。思慮が浅く、ただ誰かの言葉をそのまま信じてそちらへなびいておしまいになるようなあなたのお心では私の言うことなどはただ馬鹿らしく浅はかだとばかりお考えになり、また今はすっかり年寄り臭くなった私の容姿なども軽蔑したく古臭くばかりお思いになっていらっしゃるのも、なにかにつけ口惜しくも情けなくも思われますが、せめて朱雀院の在世中だけでもやはり信望なさってください。朱雀院が私をあなたの夫とお決めになられたのは何かそれなりの考えがあってのことでしょうから、この老人を誰かと同じ程度にご覧になって、あまりひどく軽蔑なさらないように」
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