若菜 その二六七
女三の宮がそんなふうに患っていると聞き、光源氏は六条の院に行くことにした。
紫の上は暑く鬱陶しいからと髪を洗ってこざっぱりした清々しい表情でいる。横になったまま広げた洗い髪はすぐには乾かない。髪はほんの少しの癖も毛筋の乱れもなく、この上なく美しくゆらゆらと漂っている。病人らしく顔が青く病みやつれているのがかえって蒼白に透き通るように見える肌付きなど世にまたとないほど痛々しく可憐で、いたわってあげたくなる。もぬけた虫の殻などのようにまだとてもはかなそうな感じでいる。
長年住んでいなかったので少し荒れている二条の院の内は妙に手狭に感じられる。昨日今日はこうして気分がはっきりしているので、その間にと念入りに手入れした遣水や前庭の植え込みがにわかに気持ちよさそうに爽やかになったのに目を止めて、紫の上はよくまあこれまで命永らえたものよとしみじみ思うのだった。
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