若菜 その二六三

 こうして紫の上が生き返ったあとも光源氏はかえって恐ろしく思い、大層な祈祷の数々を他にいくつも用意した上、さらに新たに祈祷を加える。在世のときでさえ生霊になって現れるなど不気味なところがあった六条の御息所なのに、まして今ではあの世で魔界に堕ち、怖ろしく不気味な姿になっているだろうと想像するとたまらなく情けないので、秋好む中宮を世話することまでもこの際には心が重くいとわしくなるのだった。


 詮じつめれば女というのは結局皆同じ深い罪障の元になるものなのだと思い、男女の間のすべてのことに嫌気がさす。あのほかに聞く人もいなかった紫の上の寝物語に六条の御息所のことを少しだけ話したことを物の怪があんなふうに言ったところをみると、やはり六条の御息所の霊に違いないと思うので、いっそう煩わしく思うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る