若菜 その二五一

 女三の宮の加減が悪いようだという知らせを光源氏は聞き、とても心配な紫の上の病気に加えてまた女三の宮までどうしたことかと驚き、六条の院へと帰った。


 女三の宮はどこといって苦しそうな様子も見えないでただひどく恥ずかしそうにふさぎ込んでまともに顔を見せようともしない。光源氏はそんな女三の宮の様子に久しくこちらへ来ていなかったのを恨んでいるのかといじらしくて、紫の上の病状などを話して、



「もうこれが最後かもしれません。この期に及んで薄情な扱いをしたと思われたくありませんので、あちらにつきっきりになっているのです。幼い時から面倒を見てきて、今更捨てても置けませんのでこの幾月、何もかも打ち捨てたように看病しているのです。いずれこうしたことが一段落しましたら自然に私の真心も見直していただけることでしょう」



 などと話す。光源氏がこんなふうであの柏木との密会にまったく気づかないのが気の毒であり、心苦しく思い、女三の宮は人知れず涙ぐむのだった。

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