若菜 その二一八
曲が呂かた律に移るとき、どの楽器も調子が変わって律の合奏になった小曲の数々もやさしく今風に洒落ている。琴は五つの調べがあり、たくさんの奏法がある中にも必ず注意して弾くべき五六の撥もとても結構に音色を澄ませて弾く。少しも危なげがなく、非常によく澄み渡って聞こえる。春秋どの季節の曲にも通う調子であれこれへと自由に変化させながら調和するように弾く。その心配りは自分がかねて教えてあげたとおりに実に正しく会得しているのを、とても可愛く面目がほどこされたと光源氏は満足に思う。
またあの笛吹きの子供たちが実に可愛らしく吹きたてて一生懸命なのを、とてもいとおしく思い、
「さぞ眠くなっただろうに。今夜の遊びはあまり長くしないで、ほんの短い時間で切り上げるつもりだったのに途中でやめるには惜しいほど楽の音がすばらしい上、どの音色も優劣がつけにくく、鈍な耳で迷っているうちについ夜もすっかり更けてしまった。思いやりのないことをしてしまったね」
と言って、笙の笛を吹いた若君に盃を差し出し、自分の着物を脱いで授ける。横笛の若君には紫の上から織物の細長と袴など大げさにならない程度にほんの形ばかりにしてあげるのだった。
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