若菜 その二〇五

 明石の女御のお琴は他の楽器の合間合間にほのかに音色の洩れてくるというのが持ち味なので、ただもう可愛らしく優雅に聞こえる。


 女三の宮の琴はまだ技量に幼いところがあるが、熱心に稽古の最中なので、危なげなく他の楽器とよく響きあってずいぶん上手になったものだと夕霧は聞く。


 それに合わせて夕霧が拍子をとって唱歌をする。光源氏もときどき扇を鳴らして調子をとりながら一緒に歌う声は昔よりはるかに情趣があって、少し声が太くどっしりした感じが加わっているように思う。夕霧も声のいい人で、夜が静かに更けていくにつれて言いようもないほど親しみのある味わい深い夜の音楽の宴になるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る