若菜 その一八六
夜がほのぼのと明けていくにつれて、霜はますます深くおりて、神楽歌の本歌と末歌のけじめもわからなくなるほど、酔いすぎた神楽の楽人たちは自分の顔が酔いでどんなに赤くなっているかも知らないで、面白さに夢中になっている。庭の篝火も衰えているのに、まだ「万歳、万歳」と言って榊葉を打ち振りながら祝っている。こうした祝福を受ける光源氏の一族の行く末はどんなに華々しいことかと想像するだけでもめでたい限りだった。
あらゆることが興の尽きることもないほどすばらしいままに、千夜の長さをこの一夜にしたいほどの楽しい夜も、あっけなく明けていった。今は沖に返る波と先を争うように引き上げていかなければならないのを、若い人々はいかにも名残惜しく思っている。
松原にはるばると立て連ねてある多くの車の風になびく隙間から覗いている衣装の華やかさが松の緑に映えて、まるで花の錦を引き添えたようにみえる。そこに位によってそれぞれ色の異なった袍を着た役人たちが風流な膳を次々取り次いで食事をする。下人などはその様子に目を丸くして、すばらしさに見惚れているのだった。
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