若菜 その一六七
東宮も、
「ほんとうに可愛らしい猫だね。まだなつきにくいのは、知らない顔がいると思って人見知りしているのだろうか。でも、ここに前からいる猫たちだって、これにそう見劣りしないよ」
と言う。柏木は、
「猫には人を見分ける心などはめったにないものですが、それでもその中の賢い猫は、自然そんな分別が具わるものでしょう」
などと言い、
「これよりいい猫がたくさんお側にいるようですから、この猫はしばらく私がお借りしてお預かりさせていただきましょう」
と言う。一方、内心ではあまりに馬鹿げたことをすると思わずにはいられない。
柏木はこうしてとうとうその猫を手に入れ、夜も添い寝する。夜が明ければ明けたで猫の世話を焼いて、撫でさすってとても可愛がって飼っている。人に懐かなかった猫も、今ではすっかり懐いて、どうかすると着物の裾にまとわりつき、側に寄り添って寝て甘えたりするのを、柏木は心から愛しいと思うのだった。
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