若菜 その一六六

 東宮はことのほか猫が好きな性分なので、詳しく尋ねる。



「あれは唐猫でして、こちらの猫とは違っていました。猫は皆同じようなものですけれど、その猫のように性質がよく人懐っこいのは妙に心が惹かれるものでございます」



 など、東宮が興味を持つようにうまく言う。東宮はこの話は聞いてから明石の女御を通じて、その猫を求めたので、女三の宮はさし上げるのだった。



「本当になんて可愛らしい猫でしょう」



 と女房たちが喜んで面白がっているところへ、柏木が少し日を置いてやってきた。東宮が自分の話であの猫を欲しがったと見て取って、おそらく猫をもらい受けるに違いないと察してのことだった。柏木は少年の頃から朱雀院がとりわけ目をかけて使っていたので、朱雀院が出家した後はまたこの東宮にも親しく出入りして仕えていた。琴など教えるついでに、



「猫がたくさん集まっていますね。どこにいるのでしょう。あの私の見た人は」



 と猫たちを見回して見つけた。とても可愛くてたまらない気がして、その猫を撫でてやるのだった。

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