若菜 その一一三

 若宮はまだ扱いにくい時なのに、紫の上がずっと抱いて放さないので、本当の祖母である明石の君はただ紫の上に任せきって湯殿の世話などに奉仕する。


 東宮の宣旨の典侍がお湯を使う。明石の君がその介添えの役を自分でするのも、典侍は深く胸を打たれる思いがする。内々の事情も少しは知っているので、もし明石の君に少しでも欠点があれば明石の女御にとって気の毒なことだが、明石の君は驚くほど気高くて、なるほどこういうような深い特別な宿縁に恵まれた人なのだと見受ける。


 この間の儀式などもいちいちそのまま書くのもことさらしいというものだろう。


 生後六日目に明石の女御と若宮は東南の町の自分の御殿に帰っていった。


 七日目の夜には帝からも産養いを賜わった。朱雀院があのように出家しているので、その代理なのだろうか、蔵人所から頭の弁が宣旨を承って例のないほど盛大に奉仕するのだった。

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