若菜 その八十四

 桐壺にいる明石の女御は入内以来ずっと里に下がれず、東宮から暇をもらえそうにない。これまで気軽にのびのび過ごしてきた若い心では、窮屈な宮仕えを苦痛でたまらない思いになる。夏頃、気分がすぐれなかったのに、東宮はすぐに退出を許さなかったので、明石の女御は本当に辛がっている。どうやら妊娠の悪阻だったようだ。まだいたっていたいけない年頃なので、出産は大変だろうと誰もが心配しているようだ。


 そのうち明石の女御はやっと里下がりが叶った。六条の院では女三の宮の住まいの寝殿の東側に明石の女御の部屋を用意した。明石の君が今では明石の女御に付き従って退出してきたのも、思えばこの上なく幸運な身の上ということだった。

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