若菜 その六十七

 今日は昼間初めて女三の宮のほうに行く。格別入念に化粧した姿を、今改めて拝見するこちらの女房たちなどは、その美しさに奉公のし甲斐があるとどんなに感激したことだろう。乳母などといった年取った女房たちは、



「さあどうなることでしょう。この人お一人は確かに申し分なくすばらしいお方に違いないけれど、今に何か心外なことが起こらなければいいけれど」



 などと嬉しい中にも取り越し苦労をする者もいた。


 女三の宮自身は、本当に可愛らしく、幼い様子で部屋の調度などがすべて堂々として仰々しいほどいかめしく格式ばっているのに、当の本人は無邪気そのもので、何の分別もない頼りない有様で、まるで着物に埋もれて体もないかと思えるほど小さく華奢だった。光源氏に対しても、特に恥ずかしがったりせず、ただ幼い子供が人見知りしないような感じで、気のおけない可愛らしい様子であった。

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