若菜 その五十九

 中務や中将の君などといった女房たちは、互いに目配せしながら、



「あまりにも思いやりがありすぎますわね」



 などと言っているようだ。この人たちは昔、光源氏が情をかけて使い馴らされた女房たちだが、光源氏は須磨に行ったときからずっと、紫の上のところに仕えて、誰も心から慕っているのだろう。他の女君たちからも、



「まあ、只今はどんなお気持ちでいることでしょう。元々御寵愛をあきらめている私たちはこんなとき、かえって気が楽ですけれど」



 などと水を向けながらお見舞いを言って寄こした。



「こんな推量をする人たちのほうこそかえってうとましい。どうせ男女の仲なんて無常なもの、それなのになぜ、そうくよくよ思い悩むことがあるだろう」



 などと考えるのだった。

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