若菜 その四十

 翌日は雪が降り、空模様ももの哀しい感じがして、二人は昔のことやこれからのことをしみじみ話し合っている。



「昨日は朱雀院が病気ですっかり衰弱なさったのをお見舞いにあがって、いろいろお気の毒に感じることがありましたよ。女三の宮のことをお見捨てするのに忍び難くお思いになって、私にこれこれとお頼みになられたので、お気の毒でどうしてもお断りすることができなくなって、お引き受けしてしまったのを、世間では大げさに噂するだろうね。今更結婚など気恥ずかしくて、気乗りもまったくしなくなったので、人を介してそれとなくお話が合った時は、何とか口実をつけてお断りしてきたのだが、直接お目にかかった際に、親心の深い思い入れを縷々とお打ち明けになったので、それにはどうしてもすげなくお断りできなかった。


 朱雀院が都の外の山深いところに隠棲なさる頃には、女三の宮をこちらにお迎えすることになるだろう。そのことをあなたはさぞ不愉快に思われるだろうね。しかしたとえどんなことがあっても、あなたに対して私の愛情が変わるようなことは決してないのだから、気にしないように。かえって女三の宮のほうこそお気の毒なことと思っています。けれどもあちらも体面を傷つけないようにはお世話するつもりです。あなたも女三の宮もみな仲良く穏やかに暮らしてくださったなら」



 などと言うのだった。

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