若菜 その三十九
光源氏は女三の宮のことを引き受けたものの、何となく心苦しくて、あれこれと思い悩んでいる。
紫の上もこうした話のあることをかねがね噂には聞いていたが、
「まさかそんなことはないだろう、朝顔の斎院の時だって、ずいぶん熱心にご執心の御様子だったけれど、強く結婚はなさらなかったのだから」
などと考え、そんな話があるのですか、とも問わず、まったく疑わず何の不安も抱かなかったのが可哀そうで、
「このことを知ったらなんと思われるだろう。自分の愛情は露ほども変わらないばかりか、そんなことになればかえって紫の上の愛情が増すばかりだろう。それでも私のそうした本心が見極められないうちはどんなに疑ったり悩んだりなさることだろうか」
など不安に思う。ましてこの頃ではお互いに心の隔てもすっかりなくなって、しっくりと睦まじい仲になっているので、しばらくの間でも心に隠し事があるのは気が重く、その夜はそのまま寝て朝を迎えるのだった。
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