若菜

若菜 その一

 朱雀院は先日の六条の院への行幸があったたりからずっと体調を崩し、病気だった。元々病身だったが、今回はとりわけ病気を心細く感じた。



「長年の間、出家の願いが強かったのだが、母君の大后が在世の頃は、何事につけても遠慮して今まで決心がつかなったのだけれど、やはり出離の道に心が惹かれるのだろうか、何だかもう長くは生きられないような気がする」



 などと言い、出家するための容姿をあれこれとするのだった。


 御子たちは東宮のほかに姫宮が四人いる。


 朱雀院の妃たちの中で藤壺の女御という人は先帝の皇女で先帝の在位の時に臣下になり、源氏の姓を賜った人だった。


 朱雀院がまだ東宮でいた頃に入内して、やがては后の位にも定まるべきはずだった。ところがこれといった後見もおらず、母君の家柄もたいしたことはなく、頼りない更衣腹の誕生でしたから、入内後の暮らしぶりの心細そうだった。

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