藤裏葉 その四十二

 太政大臣が帝の言葉を二人に伝え、それを調理して御膳にさし上げる。


 親王たちや上達部などの御馳走の支度も、いつもとは目先を変えて珍しい料理を用意させている。皆酔って日の暮れかかる頃に、宮中の楽所の楽人を呼んだ。大げさな大規模な舞楽ではなく、新鮮で優雅に演奏して殿上童が舞った。あの昔、朱雀院で紅葉の賀を催した古い日のことが例によって思い出される。


 賀王恩という音楽が奏でられる時、太政大臣の末の若君の十歳ばかりなのがとても上手に舞った。帝が衣を脱いで褒美として与える。父の太政大臣が庭上に降りて、お礼の拝舞を行った。


 主人の光源氏は庭上の菊を折らせ、昔菊の挿頭に差し替えて、青海波を舞った時のことを思い出した。




 色まさる籬の菊もをりをりに

 袖うちかけし秋を恋ふらし




 と太政大臣に詠みかけるのだった。

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