藤裏葉 その三十八
夕霧が、
なれこそは岩もるあるじ見し人の
ゆくへは知るや宿の真清水
と歌うと、雲居の雁は、
なき人のかげだに見えずつれなくて
心をやれるいさらゐの水
などと言うところへ、太政大臣が宮中から退出する道すがら、三条殿の紅葉の色に目を見張り、立ち寄るのだった。
昔、大宮が在世の頃の有様とほとんど変わりなく、どこもかしこも落ち着いた雰囲気に住んでいる二人の住居が、明るく晴れやかなのを見るにつけても、感慨無量だった。
夕霧の改まった表情で、太政大臣の感慨に誘われて泣いた顔を少し赤らめ、いつもよりもしんみりとしているのだった。
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