藤裏葉 その三十七

 夕霧は中納言になって威勢が増し、舅の太政大臣での一緒の住まいも手狭になったので、亡き大宮の邸だった三条殿に移った。少し荒れていたのを非常に立派に修理して、大宮のいた部屋を美しく改装して住むことになった。


 昔の幼い恋が思い出されてなつかしい住まいだった。前庭の草木もあのころはまだ小さかったのが、今はよく茂った大木となり、木陰を作って一叢薄も伸び放題に乱れていたのを、よく手入れさせた。遣水の水草も取り払って綺麗にしたので、いかにも気持ちよさそうに流れている。


 風情のある夕暮のひと時、ふたりお揃いで庭を眺めながらあの情けなく辛い思いをした幼い頃の思い出話などをすると、昔恋しいことが多くて、あの頃は周りの女房たちも何と思っていたかと恥ずかしく、雲居の雁はいろいろ思い出すのだった。


 昔からこの邸にいた女房たちで、まだ暇を取らずに部屋部屋にいある者などが二人の前に集まってきて心から喜び合うのだった。

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