藤裏葉 その三十五

 来年は光源氏が四十歳になるので、その祝いのことを、朝廷をはじめ世を挙げて準備をしている。


 その秋、光源氏は准太上天皇の位をもらい、御封も増え、年官、年爵などもみんな加わった。そうでなくてもこの世は全て思いのままなのに、やはり滅多にない例だった藤壺の宮の時にならって、院司なども任命した。こうして何事にもことのほかに威厳を加えていたので、これからは参内するのも面倒なことになるだろうと一方では案じる。


 帝はそれでもまだ光源氏への待遇を不十分と思い、世間を憚って位を譲れないことが朝夕の嘆きの種なのだった。


 内大臣が太政大臣に昇格して、夕霧も中納言になった。その昇進のお礼廻りに出かける。まずまず輝きを増した容姿をはじめ、不足な点が何一つない夕霧を見て、主人の太政大臣も雲居の雁を人に負かされるような宮仕えをさせるよりはかえって夕霧と結婚させて良かったと考えを変えるのだった。

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