藤裏葉 その七
手紙には、
わが宿の藤の色濃きたそかれに
尋ねやは来ぬ春の名残を
という歌がいかにも美しい見事な藤の枝につけてある。夕霧の中将は、こういう誘いを内心待ちかねていたものの、やはり現実にこうして招きを受けると嬉しさに心がときめいて、
なかなかに祈りやまどはむ藤の花
たそかれ時のたどたどしくは
と返事を書く。
「情けないくらい気後れしてしまって。あなたからよろしくおとりなししてください」
と言う。
「私がお供しましょう」
と柏木の中将が言うと、夕霧の中将は、
「そんな気の張る随身は嫌ですよ」
と言って柏木の中将を帰すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます