藤裏葉 その七

 手紙には、




 わが宿の藤の色濃きたそかれに

 尋ねやは来ぬ春の名残を




 という歌がいかにも美しい見事な藤の枝につけてある。夕霧の中将は、こういう誘いを内心待ちかねていたものの、やはり現実にこうして招きを受けると嬉しさに心がときめいて、




 なかなかに祈りやまどはむ藤の花

 たそかれ時のたどたどしくは




 と返事を書く。



「情けないくらい気後れしてしまって。あなたからよろしくおとりなししてください」



 と言う。



「私がお供しましょう」



 と柏木の中将が言うと、夕霧の中将は、



「そんな気の張る随身は嫌ですよ」



 と言って柏木の中将を帰すのだった。

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