梅枝 その六
光源氏は、
「何の秘密などあるものですか。隠し事があるように思われるのは迷惑します」
と言って、筆のついでに、
花の枝にいとど心をしむるかな
人のとがめむ香をばつつめど
とでも書いたのだろうか。
「実は、薫物でこんな大騒ぎするのは、いかにも物好きのようですが、一人しかない娘のことですから、こうしてやるのが親として当然のつとめだろうと考えまして。まったく不器量な娘なので、あまり親しくない人には腰結いもお頼みしにくくて、秋好む中宮にお里へお退りいただいて、お願いしようと思っております。中宮とはお親しくて遠慮のないお付き合いをいただいておりますが、こちらが気恥ずかしくなるくらいのお嗜みの深い人なので、万事、世間並みの支度ばかりをお目にかけますのも、畏れ多いと存じまして」
などと言う。
「それは中宮の御幸運にあやかりになるためにも、ぜひともそうされるのが当然でしょう」
と賛成するのだった。
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