真木柱 その五十一
噂に聞いていたよりも、実際に見たほうがこの上なく美しかったので、はじめからそうした気持ちがなかったにしても、そのままでは見過ごせなかっただろう。ましてこうなってはいっそう妬ましく、名残も尽きず、残念に思っている。だが玉鬘にほんの一時の出来心のように思われて疎まれまいとして、いかにも愛情をこめて将来のことをいろいろ約束して、自分になつけようとするのだった。
玉鬘はただもう畏れ多くて、帝の言った昔話の女が、「現実に誰と契ったか覚えもないほど、まるで夢路をさまよっているような私なのに」と歌ったのと同じ気持ちで、困り切っている。
御輦車を寄せて、二人の大臣家から迎えの人々も、待ちくたびれている。
髭黒の大将も、何ということなくうるさくつきまとって、急き立てるまで、帝は玉鬘の側から離れないのだった。
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