真木柱 その五十

 髭黒の大将は、帝がこのように玉鬘の部屋に来ると聞いて、いよいよ気が揉めてならないので、早く退出するように、しきりに急き立てる。玉鬘自身も、このままでは帝寵を蒙るなどという不相応な事態も起きかねないと悩んだので、のんびりともしてられず、退出する口実をもっともらしくいろいろとひねり出して、父内大臣なども、上手に帝に取り繕い、やっと許されたのだった。帝は、



「それなら仕方がない。これに懲りて、もう二度と参内させないと言い出されても困るから。それにしても私ととても辛い。誰よりも先にあなたを思っていたのに、人に奪われて、今ではその人物のご機嫌を取るようになったとは。昔の恋人を奪われた誰かの例も引き合いに出したいような気がする」



 と言い、思いがけない結果になったのを心から口惜しく思っているようだった。

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